紙(DTP)デザイン出身の私(Webデザイナー)が思った、Webと紙デザインの違いとポイント
紙デザイナーからWebデザイナーに転向した私ですが、現在では両方のデザインをやっています。
(Webデザインに対して印刷物系のデザインを何と言うかいまいちわからないので、私が普段使っている「紙デザイン」で統一させていただきます。DTPデザインと言うのが個人的にしっくりこないので…)
同じデザインという枠で括られているし、両方ともイラレやフォトショを使って作業をするし、すごく似ているような気がしますが前提条件が違うし、お作法も違います。
そんな違いを私なりにまとめました。
目次
- 単位
- 色
- 文字
- 印刷
- その他注意すること
- まとめ
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単位
紙のデザインをする時は単位をmmにして作業しています。線の太さ、文字サイズはptです。
(一日のうちにWebと紙を行ったり来たりすることがあると、この単位変更が面倒でなりません。どなたか便利なプラグインを開発していただけないでしょうか…)
Webデザインだと、ラインを引く時、一番細くて1pxですが、紙のデザインでは1px以下でもぼやけたりしません。Webでの1pxのラインと同じ感覚で使用するさりげないラインの場合には、むしろ1pxだと太すぎる場合が多いと思います。
私が紙デザインでラインを引く際、一番細くて0.3ptにしています。印刷の時にかすれてしまう可能性があるので極端に細い線は使用しません。イラレのデフォルトで0.25ptがあるのですが、0.25ptを使用しないのは単に私の好みです。
色
紙デザインで使用カラーモードはCMYKです。
CMYKはRGBよりも色域が狭いので、鮮やかな色味の画像データをCMYK変換するとくすんだ印象になってしまう場合があります。青や緑の退色が顕著かなぁと思います。
例えば、この海辺の写真。RGBとCMYKで空と海の色味が違うのがお分かりいただけますでしょうか?
CMYKだと写真が全体的に暗くなっています。
退色の他に色で注意していることでは、青を表現する場合に、シアンとマゼンタの色のバランスによって、印刷結果が紫色に見えてしまうことがありますので、注意が必要です。
企業のロゴなど、厳格なルールで色が決められている時は特色の使用も視野に入れて提案をします。
リッチブラック
印刷の黒には、スミベタとリッチブラックがあります。
スミベタは墨のベタなので、K100%のことを言います。
リッチブラックとは、CMYKの4色を掛け合わせた、スミベタよりも深みのある黒のことを言います。
それぞれに長所短所がありますので、使い分けが必要です。
本文などで使用する文字や、細いラインに使用する場合はスミベタを使用します。細かい所にリッチブラックを使用すると、文字やラインが太くなってしまったり、つぶれてしまうのを防ぐためです。
(とは言っても、私が経験した限りでは、4色掛け合わせの6pt位の文字でもトラブルになったことは今のところありません。)
その他にもスミベタとリッチブラックについていろいろあるのですが、全部書くとそれだけで1本の記事になってしまう程の長さになるので、必要な方は大変お手数ですが、おググりください。(←念願の「おググりください」)
色については、「特色」というキーワードもありますが、それもまた別の機会に…
文字
Webと違い、紙に印刷されるので、環境によって見た目が変わることはありません。
ということで、フォントの選び方や文字詰めなんかも変わってきます。
Webでは私は14pt前後を本文に多く使用しますが、紙の場合は7〜8ptあたりを本文に使用することが多いです。キャプションなどの小さい文字は可読性を考えて5.5ptを最小サイズとしています。もっと小さくても読めないことはないと思いますが…
また、食品の成分表示における文字サイズは何ポイント以上ということが法律で決められていますので、食品系のパッケージデザインでは注意が必要です。
印刷
データ納品ではなく印刷まで自分で請け負う場合は、通販印刷も便利で良いのですが、地元の印刷会社に頼むことを検討してみるのも良いかもしれません。
通販印刷は安いし、品質も問題ないと思いますが、では、地元の印刷会社にお願いするメリットはなにか?
担当営業の人がいろいろ相談に乗ってくれることです。
紙には様々な種類があってお値段もピンキリで、イメージや予算に合った紙を選ぶのも一苦労ですし、紙の見本帳も買おうとするとそれなりのお値段がします。
そこで、印刷会社の営業さんに相談をすると、どんな紙がいいか相談に乗ってくれたり、実際の紙を見せてくれたりします。PPや箔押しなんかの加工見本も同様です。
分厚い冊子になるようなら、束見本(実際に使用する用紙・ページ数で作った冊子の見本)を作って見せてくれることもありました。
また、増刷する可能性があるような物は、印刷の度に色味が少しずつズレてしまうこともあるのですが、その際にも、基準となる初版の冊子を渡して、この色に合わせてほしいとお願いすることで色ズレを防止することも出来ます。
案件によって、どこに印刷をお願いするかを決めるのが吉なのです!
その他注意すること
入稿データを作る時、文字データにアウトラインをかけてパス化します。その際に、編集用のデータにうっかり上書きをしてしまってテキストデータがなくなってしまうという大変不幸な事故が起こってしまうことがあります。私もアウトライン上書き事件を起こして上司に大変な迷惑をかけたことがあります…。
そのようなことがないように、入稿データはaiファイルをコピーして、そのコピーしたデータにアウトラインをかけて保存することを強くお勧めします。
入稿データを作る際は、今まで作業していたデータをコピーしてからアウトラインをかけることを強くお勧めします。
大事なことなので二回言いました。反省しています…。
まとめ
紙とWebとでふらふらして結局どっちも中途半端何じゃないの?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私は両方のデザインを経験できて良かったと思っています。
紙のデザインで経験したグラフィックデザインや細かい文字詰めはWebデザインをする時でも役立っていますし、Webで経験した情報設計的な考え方は紙のデザインでも役立っています。
会社案内もWebサイトも両方、などという依頼を頂いた場合も、別々のデザイナーが分担するのではなく一人のデザイナーが両方で来たら、より統一感が出て企業やお店のブランドイメージ作りに貢献できるのではないかな。と思います。